2020年シーズンを終えて…
2020年のBellmare Racing Teamはチームの体制を大きく変更しました。米国籍のUCIコンチネンタルチームであるHincapie Racingと合流し、「Hincapie LEOMO p/b BMC」として海外のレースに参戦。一方のJプロツアーでは「Hincapie LEOMO Bellmare Racing Team」として参戦する体制を構築していました。UCIコンチネンタルチームには石原祐希、小山智也、門田祐輔の3選手が加入。国内チームには、才田直人、米谷隆志、中川由人(主にトラックレース)の従来メンバに加え、新たに小畑郁(なるしまフレンドより移籍)、小林弘幸(信州大学)、永塩幸之介(群馬グリフィンエリートより移籍)の3名が加わり、国内外での活躍が期待される1年となるはずでした。
しかし、新型コロナウィルスの影響により、UCIコンチネンタルチーム組は日本から出ることができず、国内レース自体も次々と中止が発表され、いつ走れるようになるのか、全く先の見えない2020年シーズンが始まります。
関係各所の多大なるご尽力によって2020年の初戦が開催されたのは7月末。Hincapie LEOMO Bellmare Racing Teamは海外参戦するはずだった3名と共に今季のレースを戦うことになります。当初は脚力も経験も異なる8名の選手たちが一体どのようなレースを展開していくのだろうと心配になりましたが、海外参戦組の3選手と米谷選手は、それぞれの歯車を噛み合せながら次第に結果に繋がる走りを見せてくれるようになりました。一方、序盤は苦しいレースを余儀なくされた若手組も、集団先頭で戦う選手たちやベテラン小畑選手の背中を見ながら経験を積み、徐々にレースの展開が見える位置での走り…だけでなく、レースを動かす走りを見せてくれるようになりました。
いろいろな意味で大変なシーズンにはなりましたが、例年になく見ていて面白いシーズンでもありました。2020年の最後を迎えるにあたり、宮澤監督と9名の選手たちのコメントで今シーズンを締めたいと思います。
宮澤崇史監督
2020年のベルマーレはチーム創設以来最も結果の出たシーズンとなりました。石原選手の優勝や上位へ食い込みは、チームとしても大きなアピールとなり、門田選手の積極的な走りは、他チームだけでなく国内の自転車界でも高く評価されました。一方、レース展開への指示や、チームとしてのレースに取り組む姿勢を、監督から選手に理解してもらう部分が上手く伝え切れないところもありました。
選手は勝てる可能性が高くなると守りに入る展開になりやすく、積極的にレースを動かす事ができなくなる場面があります。そこに関しては門田選手、石原選手の両名に欠けている部分だと感じたシーズンでもありました。しかし、そこはチームの力を発揮し、小畑選手や米谷選手の後押しもあり、結果に結び付ける事ができました。また、小山、永塩、小林の3選手は、レースの中で1つでも自分にできる事を積み重ね、集団の先頭を牽いたりと、シーズン後半には少しづつではありましたが成功体験ができるようになりました。この積み重ねを毎レース続けていくことが、今後の成長に繋がると期待しています。才田選手については、今シーズンは怪我が続いてしまい、本来の役目を担うことができませんでしたが、これは来季の大きな課題となるでしょう。
レースを動かす事ができる選手は、レースを通して強い精神力と揺るぎない力を手に入れる事ができ、レース毎に成長していきます。
勝つことは重要ですが、ただただ「結果を出すために良い展開に乗りたい!」というレースは、消極的でかつチームとしての連携も低くなり、周りからの評価が低くなります。これを若い選手が理解することは大変難しいことですが、レース内容にこだわり抜いて出した結果は、次の大きなステップへ繋がります。今後も期待してます。
米谷隆志選手
今年度でJPTでの活動に一区切りつけようと決めてスタートした2020年だったが、コロナ禍により誰も経験したことのないイレギュラーなシーズンになった。
変則的なスケジュール下でトレーニングのリズムが上手く作れずに苦しんだり、楽しみにしていたコースでのレースが軒並みなくなったことでモチベーションの行き先に悩んだりした時期もあった。初戦の群馬は正直自分でも驚くほど走れず、かなり落ち込んだことをよく覚えている。それでも、合宿やレースを走る中でチームメイトから刺激をもらい、このチームのために自分に出来ることを精一杯やろうと一つ一つ取り組んでいくうちに、いくつかのレースでは評価してもらえる動きをすることが出来た。振り返ってみれば今年も充実したシーズンだったと思う。
今年はこのチームに入って以来初めて自身のトップ10のリザルトの無いシーズンになった。
しかし、それは実力的に過去のシーズンから進歩がなかったためでも、レースに絡めなかったためでも決してない。コロナ禍で相性の良いいくつかのレースが開催されなかったこともあるが、海外でのレースがなくなり、JPTを走ることになったコンチネンタル組の存在が大きかった。実力と経験と共に高いレベルにある彼らと走ることで結果的にサポートに回ることが多く、自身のリザルトからは遠くなったが、それはとても刺激的で、得るものの多い時間だった。
特に印象的なのは、群馬での交流戦と最終戦の経産旗。交流戦はチームとして動いて石原の優勝に貢献できたレース。経産旗は意思疎通がうまく取れず展開を作れなかった苦さの反面、結果にこそ繋がらなかったものの終盤に連携して門田の攻撃に繋げることが出来たレースとしてそれぞれに思い出深い。
こうして様々な経験から得た自信や教訓は、自転車の上でもそれ以外でも、自分の中で生き続けていくだろう。
最後に改めて、困難な状況にも関わらず、今年も変わらない多くの応援と手厚いサポートをありがとうございました。
石原悠希選手
初めに、今シーズンサポートして頂いたチーム関係者の皆様、レースを開催して下さったレース関係者の皆様、応援して頂いたファンの皆様、1年間ありがとうございました。
今シーズンは元々ヨーロッパで活動する予定でしたが、コロナウイルスの影響で国内レースのJプロツアーをメインに参戦する形となりました。
今シーズンを振り返ると印象に残っている事が沢山思い浮かびますが、特に8月23日に行われたJプロツアー群馬交流戦day2が深く印象に残っています。この日は感覚的にあまり調子が良くなく、コンディション的に不安な部分がありましたが、チームで上手く連携することができ優勝することができました。この優勝は自分の力だけでは到底勝ち取ることは難しく、チームが力を合わせた結果であると思います。
来シーズンも今後に繋がるよう全力で普段の生活から練習、レースに取り組みたいと思います。
1年間ありがとうございました。
門田祐輔選手
まず始めにこのコロナ禍という状況の中で、レースを開催して頂いたJBCFの方々本当にありがとうございました。
今年はコロナの影響でシーズン当初予定していたヨーロッパでの活動ができなくなり、日本での活動がメインになりました。僕としては初めてのJプロツアー参戦となり、どのようなシーズンになるのか楽しみでした。レースを重ねていくうちに、コンディションも良くなり、チームでの連携もできるようになったと思います。ただ自分としては優勝まであと少しのレースが多く、満足したシーズンではありませんでした。
また更に強くなって、来季フランスから良い報告ができるように頑張ります。
そしてファンの皆様、配信を見てくださった方々沢山の応援やメッセージありがとうございました。
これからも応援宜しくお願い致します。
小山智也選手
コロナ禍で異例のシーズンとなった今シーズンですが、JProTourでは、個人的にも、チーム的にも期待値に及ばない走りとなってしまったと思っています。後半になるにつれて上手く走れるキッカケを掴みつつありましたが、シーズンが短かったので出し切れずに終わりました。JProTour以外のレースではレベルは低いですがスプリントで勝つことができたので、当たり前のレベルで勝てたのは良かったかなかと思います。
来シーズンは当たり前のレベルを上げていき、更に上のレベルで勝てるようにしっかり準備して行こうと思います。
チーム関係者、レースを開催して下さった皆様、応援サポートして下さった全ての方に感謝します。
一年間ありがとうございました。
小林弘幸選手
大学を休学し、気合とやる気に満ち溢れたJPROツアー1年目のシーズンは地元長野で行われたチーム合宿から始まりました。
チームメイトの多くとは春に参加したタイ合宿で顔を合わせていましたが、改めて一緒に走ってみると山では置いて行かれる、スプリントでは踏み始めで置いて行かれるで、脚の差は歴然でした。練習中だけでなく、食事や練習後のリカバリー、機材の管理など終始学ぶことだらけでした。
これが自分と同等かそれ以下の選手に囲まれていたら周りから学ぼうという姿勢は生まれなかったと思うので、本当に恵まれた環境だったと思います。
レースが始まるとさらに学ぶことが増えました。監督にアドバイスを頂いて今までの完走を目標とするような走りを改め、チームの勝利を目指すチーム戦というものをイチから叩き込まれました。強いチームのおかげで石原さんの優勝という経験もさせてもらえました。来年は個人のリザルトも残せるようにオフトレ頑張っていきます。
来年以降も応援よろしくお願いします。
永塩幸之介選手
2020シーズン、Jプロツアーデビューとなりました。今まで出場していたレースよりはレベルが高く苦しいシーズンでした。チームとしての戦術を学ぶ良い機会になったと思います。チームの方々が強く恵まれていたので成長出来たと思います。
来年はU23カテゴリーになるので更に気合いを入れて頑張りたいと思います。
宜しくお願い致します。
中川由人選手(トラック班)
2020シーズンではロードレースからトラック短距離に転向した。
冬のトレーニングにて最大出力を昨シーズンより400W程度向上させた。しかし、冬場のレースではタイムが出ないので、どれだけ力が着いたのかは分からずもどかしかった。
それから4月以降の出場を予定していたレースが中止になってしまい、ずっとどれだけ力が着いたのか分からず残念だった。チームでのシーズン初戦となった8月のJBCF東日本トラックでは、スプリントで3位ではあったが格上の相手に1本取れて、自分の強いポイントが分かって収穫があったと思う。その後もレースは少なかったが、毎レースごとに一歩一歩成長できたと思っている。
(代表に選ばれたかどうかは分からないが、)国体が中止になってしまったのが特に残念だ。シーズンラストのナショナル選手権では明らかに去年よりも出来る事が増えて成長を実感できた。それでも力の差は歴然であるのだが。
遠征でコンチネンタルの選手と一緒になった時には、競技への考え方や将来の展望についての話を聞いて刺激を受けたし、やはり皆キャラクターが濃いと思った。
来季もよろしくお願いします。
才田直人選手(ベテラン班)
コロナ禍でレースが中止になっていた春に鎖骨を骨折。年々怖くなっていた下りや集団走に更なる恐怖心を持ってしまう。フィジカルを戻すのはハードにトレーニングすれば良いのでそこまで難しくはなかったがメンタル面の切り替えがうまくいかずに復帰は最終戦に。
唯一走ったレースの感想はただ楽しかったということ。チームにも貢献できず、迷惑をかけっぱなしだったシーズンだったが、最終戦で一緒に遠征できて良かったな…という気持ちが残った。
自分がチームにできることを考えさせられる一年だった。毎年同じように過ぎていくシーズンよりずっと考えることも多かったし、ある意味充実して過ごせたと思う。
小畑郁選手(ベテラン班)
基本的になるしまでの活動経験しかなかった自分でしたが、宮澤監督の現役時代や才田選手や米谷選手と一緒に走ったレースなども多く「勝手知ったる他人のチーム」的な感覚を持ちながら合流させてもらいました。
個人的には心機一転、トレーニングの内容・ボリュームとも一新してレースシーズンを迎えたいと準備していましたが、メンタルの弱い選手の典型かコロナという外乱の影響を受け準備不足のままでシーズンインを迎える形になってしまいました。
クラブチームで個人の力に頼るレース参加から、LEOMOチームでは各選手へ能力に対して可能であろうタスクが各々に課され、レースの流れを考えながらゴールまでの戦い方を組み立て修正しながら走るという経験をする事ができ、自転車レースIQを改めて意識しつつ高める事ができたシーズンでした。
レースレベルが上がるにつれ、同じチームの仲間が勝ち負けの勝負をし、勝つレースをするという事はなかなか経験できなくなります。そういう意味でLEOMOチームとして石原選手が一勝を上げたの大きな事で、そのレースを一緒に走れたという事は忘れられない記憶になるでしょう。その一勝もシーズンスタートから数レースでの宮澤監督のR&Dと選手みんなでのチャレンジの流れが勝ちに繋がったと思います。
今季の心残りは、自分の準備不足から老兵の自分に求められたはずの監督と若者の間に入ってのコミニュケーションの円滑化、自転車レースの勝ち方・戦い方というスキルを身につける為の手助けが大してできなかったとの思いです。
来季ではそのあたりを改善したいと思っています。
Text: Kensaku SAKAI/FABtroni+camera × P.A.V. and Takashi MIYAZAWA, Edit, Photo&Comment: Kensaku SAKAI/FABtroni+camera × P.A.V.