27JUL.2019@第2回JBCFチームタイムトライアルチャンピオンシップ, JPT #13
第2回JBCFチームタイムトライアルチャンピオンシップ
– 栃⽊県栃⽊市/渡良瀬遊⽔地内⾕中湖北ブロック –
5.3km/3周回 15.9km
1位 TEAM BRIDGESTONE Cycling 18:48.66 ave50.71km
2位 マトリックスパワータグ 18:52.97 +00:04
3位 宇都宮ブリッツェン 18:58.28 +00:09
4位 JPT特別指定選手チーム 19:26.52 +00:37
5位 東京ヴェントス 19:55.51 +01:06
6位 那須ブラーゼン 19:56.23 +01:07
…
7位 LEOMO Bellmare Racing Team 20:03.95 +01:15
Jプロツアー第13戦は第2回JBCFチームタイムトライアルチャンピオンシップ。国内でも数少ないチームタイムトライアルが栃木県の渡良瀬遊水地を舞台に開催された。今回で2回目となるこのレースは、渡良瀬遊⽔地内にある⾕中湖の北側に設定された1周5.3kmの周回路を3周する計15.9kmのタイムトライアル。台風6号の接近により、翌日予定されていた個人タイムトライアルは早々に中止が決定されたが、土曜日のチームタイムトライアルは台風が近づいているとは思えないような晴天の下で行われた。ただ、風はレーススタート後から段々と強まり、第5ウェーブのスタート前には風が弱まるの待つためにレースが一時中断される場面も見られた。
レースは普段Jプロツアーを走る15チームのうち群馬グリフィンを除く14チームが出走。これに特別参加のJPT特別指定選手チームが加わって全15チームで行われた。
第1ウェーブの第1走となったJPT特別指定選手チームが19分26秒52の高タイムをいきなり出すと、その後このタイムを破るチームが現れないまま第6ウェーブまで進行。13番目の出走となった宇都宮ブリッツェンまでタイム更新はなされなかった。前回の優勝チームでもある宇都宮ブリッツェンが18分58秒28で暫定1位となり、残すは最終ウェーブのマトリックスパワータグとチームブリヂストンサイクリングのみ。まずはマトリックスパワータグが18分52秒97でトップタイムをマークしたが、2分後にスタートしたチームブリヂストンサイクリングが猛追する。チームブリヂストンサイクリングは15.9kmを18分48秒66で走り切り、マトリックスパワータグに約4秒の差をつけて優勝した。
LEOMO Bellmare Racing Teamは才田・岸・米谷・岩瀬・中川の5名の選手で出走。機材繰り等の事情で一時はレースに出走しない可能性も出ていたが、なんとか調整してレース当日を迎えた。ただ当日は試走時間とチームマネージャーミーティングの時間帯が重なっていたため、チームキャプテンの才田選手を欠いたままの試走。5人が揃って合わせる事が出来なかった。また、出走人数は昨年から1名減っての5名出走、そのうちTTバイクで走る選手は3名のみ、さらには台風の影響による強い風でレース条件としても厳しい状況となった。それでもレース前には5名で綿密に作戦を練り、声掛けや状況によって臨機応変に対処する事を確認して出走時間を迎えた。
結果としては、前年からひとつ順位を落とした7位でレースを終えたものの、1名少なくかつ強風下のレースだったにも関わらず約3秒のタイム更新。またトップからの差も前年の1分25秒差から10秒更新しての1分15秒差となった。紆余曲折あったものの、最後は選手同士で綿密にコミュニケーションを取り、刻々と変わる状況に上手く対応しながら、チームとしてのまとまりを見せたリザルトとなった。また、最後の3名に中川選手が残った点も取り上げておきたい。彼の力の見せ所がやっと来た、渡良瀬でのレースとなった。
PHOTO REPORT
試走中に本番での動きを確認するLEOMO Bellmare Racing Teamのメンバ。
出走を待つ選手たち。岩瀬・中川の若手二人組は普段のロードフレームにDHバーを装着したバイクで出場した。
LEOMO Bellmare Racing Teamは第3ウェーブの最後、全体で8番目の出走。
渡良瀬遊水地の強い風と強い陽射しの下、13時34分にLEOMO Bellmare Racing Teamのタイムトライアルがスタート。
2周目を終えてラストラップに入るLEOMO Bellmare Racing Team。2周目の途中で岩瀬選手がドロップ。直前に発覚したメカニカルトラブルによる焦りと、ウォーミングアップを行う時間が取れなかった影響があったかもしれない。
ラストラップの終盤、ここで岸選手が離脱して残りはタイム計測に必要なギリギリの3名に。
米谷選手、中川選手、才田選手の順でラストラップの最終コーナーに飛び込んで行くLEOMO Bellmare Racing Team。
昨年と較べると悪条件が重なった今年のチームタイムトライアルだったがタイムは更新…という訳で、帰り支度中の選手たち。
お疲れさまでした。
RIDERS REPORT
✎才田選手:
当日は監督会議に出席しなければならなかったため、試走でみんなと合わせられなかったのが少し不安だった。とはいえ良く知った機材とコースなのでミーティングでやる事・注意する事を認識合わせしてスタートへ。具体的にはコーナーの立ち上がりで全員が揃ってから踏む、きつくなったら早めにローテをパスする、もし最後に余裕があればそこで回る等など。
スタートしてみると試走時間よりはるかに風が強く、前輪を取られて踏むことに集中できない。岩瀬を早くに失い、岸と中川も2周目途中からツキイチに。米谷と長引きしながらギリギリのペースを保つイメージ。ゴールまで切れなかった中川の判断と頑張りに助けられた。最後は一回ローテも回れたし。米谷は昨年のリベンジをしっかり果たした内容。昨年より順位は一つ落ちて7位だったが、タイムは4秒早い。強風の中でかなり神経をすり減らすタイムトライアルとしては上出来だったと思う。
個人的な反省としては前輪に80ミリハイトを選択した事。試走時との風の強さの違いを把握し切れていなかったので、かなり煽られて自分も後ろについたチームメイトにも悪い影響を与えてしまった。一つ経験値は上がったと考えて次に活かしたい。
✎岸選手:
自分が苦手としている部分がもろにでて、2周目の途中で回れなくなりそこで終了。実際今回のタイムトライアルはレースレポートも何もない。来週は再び大分のUCIレースへの出場チャンスを頂いたので結果で挽回する。
✎米谷選手:
去年は調整に失敗して思うように力を出せなかった悔しさのあるレース。なので、今年は牽引役としてちゃんと貢献したかった。今年は親からTTバイクを借りて練習し、調子も整えて備えていた。毎年進歩が測れるので楽しみにしていた個人TTが中止になったのは残念だったが。
監督会議に出てもらった才田さんを除く4人で3周試走した。試走前に先頭交代のタイミングで声を出すことを全員で確認して、まずゆっくり1周、次に少しペースを上げてもう一周。スタートから直角までが向かい風、直角の後が右からの横風、ゴールまでが追い風なのを確認。先頭走者が風上に寄り、後ろは風下について風を避けること、立ち上がりは最後尾の人の合図を待ってから踏み始めることなどを4人で確認し、ペースを抑えてもう一周。岩瀬は2周目のペースできついとの事だった。
試走後に全員で作戦会議。交代の合図に声を出すこと、風下に並んで風をよけること、コーナーの立ち上がりでの合図、余裕のある人が長引きし苦しい人は早めに申告して付き位置になることを共有した。並び順は、TTバイクでペースを作れるだろう才田さん、岸さん、自分を一つのセットに。先頭はスタートのペースを作る才田さん、次に背の順で岸さん、自分の順。続いてロードバイク+DHバーの岩瀬と中川で回す。
個人的な目標は不意の脱落者を出さないこと。苦しくなる前に付き位置にさせるなどコミュニケーションを密にとり、気づかない内に脱落者を出してしまい、そこからローテーションが崩壊するような事態だけはないようにしたかった。暑かったのでオーバーヒートを避けるため、才田さん、中川くんと実走でアップ。自分は才田さんと間隔を開けてペースを合わせるように。中川くんも途中ペースを上げたタイミングで苦しいと感じたようだった。
岩瀬と中川君は早い段階で付き位置になる可能性が高いという事を頭に入れてスタート。1周目はペースを抑え、才田さんより短め、30秒ぐらいで交代しつつ、かなり余裕を持って完了。試走時より風がかなり強く、とても神経を使う。2周目に入り、苦しそうに下がってきた岩瀬に声をかけようとしたがそのまま切れてしまった。岩瀬が切れた事をすぐに全員で共有。その後に下がってきた中川君も苦しそうで、大丈夫か聞くと付き位置になるとのこと。それもすぐに共有。さらに左直角コーナーの前で岸さんも回れなくなり、才田さんと2人に。約1分ずつで回って2人でペースを保ち、終盤にかけてペースを上げていく。最後は岸さんと中川くんが1回ずつ前に出てくれた。先にローテーションに入った岸さんがそのまま脚を止めたため、中川君は切れられない状態になったが、無事に3人まとまってゴール。
チームとしてまとまりきれない感があった。タイムを伸ばす上では、最初の1周のペースを上げられなかったのがネックになるという去年と同じ失敗をした形。互いの余裕度をはかりながら探り探り序盤を走ったことが影響したように感じた。ここはヴェントス、ブラーゼンとチーム練習の回数の差が出た部分だと思う。岩瀬を早々に失ったのも失敗。もう少し早く声をかけていれば付き位置で残れたかもしれなかった。リカバリーはすぐに出来たが、ここは個人的目標を達成できなかった部分。一方で、調子をレースに合わせられたことは良かった。去年と違い本来のパフォーマンスを出すことができ、才田さんと2人になってからも終盤にむけてラップを上げることができた。TTのフォームも少し改善できたかもしれない。レース中の写真を見ると、相変わらず頭は高いが去年よりは低く見え、ヘルメットと背中の隙間は小さくなった。今回頑張ったのは中川くんだと思う。付き位置になる判断を的確にし、ゴールまで残ってくれたことにとても助けられた。
これで1ヶ月レースが開く予定だったが、2週間後に大分のUCIレースに出る機会をもらった。UCIレースは今回が初めて。調子は悪くないと感じられたので、トラブルなくレベルの高いレースを楽しめるように準備して臨みたい。
✎岩瀬選手:
当日は少し疲労があったがコンディションは悪くなかった。ウォームアップ始めた時、リアディレイラーが変速しなくなりワイヤーの半切れが発覚。発覚したのがスタート30分前だったので、ウォーミングアップをする事もできず、気持ちの焦りが落ち着かないままスタート。
スタートして強風の中ペースが落ち着かずガチャガチャした感じの中で、自分のペースを作れずただがむしゃらに踏み倒してしまい、気が付いたら脚も一杯でチームの隊列から離脱した。
ワイヤーが切れる事を予測していなかったし、普段のバイクのメンテナンスと準備不足。初歩的なミスでレースを無駄にする事は今後絶対に無いように今回の悔しさと経験を糧にする。
✎中川選手:
レース前の移動中や準備中に才田さんと米谷さんと話をして作戦を考えた。というか作戦を教えてもらった。その時に、岩瀬と中川は前を牽くことよりも切れないことが大切、きつかったら早めにツキイチになるなどの判断をするべき、声を出してコミュニケーションを取ることなど教えてもらった。そして、自分は特に先頭交代の際にスピードを落とさないこと、ペースを一定にして乱さないことも心がけるべきだと思った。
会場に着いて、才田さん以外の皆でした試走の時間では、岸さんに風向きによってローテの下がる方向を変える、横風区間では斜めの隊列を作る、そしてコースのラインどり等を教えてもらった。試走の2周目は少しペースが上がったが、もう少しペースが速くても大丈夫かなと感じた。試走中にサドルのポジションが窮屈だと感じたので試走後にサドルを1.5cmくらい上げて、1.5cmくらい前に出した。アップは才田さんと米谷さんと実走で行った。間を空けてこの2人と同じペースで走ると結構きつかった。なので、途中からはほどほどにしておいて、アップ後に結構きついですと伝えた。
レーススタートして、1周目は10秒程度だがローテに回った。最初はもう少し長く牽ける気もしたが、自分の脚質(余裕があると思っても早めに終わりやすい)と後のことを考えて短めにさせてもらった。コースは試走の時よりかなり風が強くなっていて危険だった。90度コーナーで才田さんが遅れかけていたので前の皆に伝えた。2周目に入って、岩瀬が切れたことを皆に伝えた。自分もきつくなってこのままでは3周目に切れそうだったのでツキイチにさせてもらった。強風で、また自分はTTTに不慣れだったため一番後ろで勝手にインターバルがかかって脚を消耗してしまったのは良くなかった。3周目もツキイチで、最後だけ少し牽いてゴール。追い風&横風区間はきつかったが米谷さんに最後「切れるなよ!」と発破を掛けられてなんとか保った。
今回のレースはど平坦で時間も短いためチームに貢献したいと考えていた。最後まで行けたのは良かったが、途中からツキイチになってからは才田さんと米谷さんとの差を改めて感じた。
✎宮澤監督から
選手によって使用バイクがTTバイクとロードバイクに分かれてしまったが、アジアの大会を考えればロードバイクでタイムトライアルを走るのは当たり前なので、力の差をどう上手く分散できるかがポイント。風が強く、お互いに声を掛け合いながら走る中で、疲労のある選手を助けながらのレースとなった。
岸は得意種目で自分の脚を生かせなかったことが残念。中川は最後まで走りきる事を考えて走った点、チームメイトに状況を伝え、まとまりを作った点は評価できる。一方で短い高強度ローテーションは得意分野だと思うので、今後のレースを考えると、このペースで先頭交代ができないとJプロツアーでは通用しない。この点が今後の課題だろう。米谷と才田は後半2名でのチームタイムトライアルになってしまったが、後半タイムを上げられた事を考えると次のレースまでにもう2段階位上げた状態で望んで欲しい。
才田 ¥5,000
岸 ¥0
米谷 ¥5,000
岩瀬 ¥-4,000
中川 ¥10,000
PHOTO OF THE DAY:
チームTTの撮影は全員が揃っているところをいかに撮るか…という問題があるが、今回は無事に5名が揃ったシーンを押さえることが出来た。
Text: Kensaku SAKAI/FABtroni+camera × P.A.V. and Takashi MIYAZAWA, Edit, Photo&Comment: Kensaku SAKAI/FABtroni+camera × P.A.V.